出張旅費規程を定めるメリットとデメリットについて解説

出張旅費規程が、単なる社内ルールに留まらない重要な役割を果たすことをご存じでしょうか?実は、出張旅費規程を適切に設定し運用することで、節税に加えて社会保険料の削減も可能になります。もしかしたら「我が社は小規模だから出張旅費規程は不要」と考える方もいるかもしれませんが、出張が頻繁な小規模企業や社長1人の会社でも、適切な規程の策定は非常に有効です。

ただし、注意が必要なのは、個人事業主には自身に出張旅費を支給する形での節税は適用されない点です。本記事では、出張旅費規程を設けることにより、税金や社会保険料をどのように節約できるかを詳しくご説明します。

出張旅費規程とは?

出張旅費規程は、出張に伴う費用の管理と支払いに関するルールを明確に定めたものです。この規程には、交通費、宿泊代、出張手当など出張にかかる費用の取り扱いが含まれます。

規程がない場合、出張に要した費用は実際にかかった金額がそのまま出張者に支払われます。これは「実費精算」と呼ばれ、具体的に発生した費用を証明し、会社に請求する方式です。

しかし、出張旅費規程を設けると、これが変わります。規程に基づいて、交通費や宿泊代などが定められた基準に従って支給されるようになります。この方法は、実費精算に比べて管理がしやすく、出張者も支給額が事前に分かるため、計画的に出張を行うことが可能です。

さらに、出張旅費規程では出張手当の支給も可能です。出張手当は、出張による食事代や小さな雑費などを補うためのもので、これにより出張者は出張中の諸雑費に対しても安心できます。この手当は、出張の際に発生する予想外の小支出をカバーするためのもので、事前に定められた金額を基に支給されます。

出張旅費規程を設けることは、企業にとっては経費管理の効率化につながり、出張者にとっては明確な基準に基づく支給が保証されるため、互いにメリットがあります。

参考:

出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm

出張旅費、宿泊費、日当等に係る仕入税額控除の適用要件(国税庁)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/08.htm

出張旅費は非課税

会社が役員や従業員に支給する手当(残業手当、住宅手当、家族手当など)については、原則として給与所得となり、所得税・住民税が課税されますが、通勤手当については、「通常必要なものと認められる範囲」であれば、所得税・住民税は課税されません。

また、会社の職務遂行のための旅行に際して支給される金品(いわゆる「出張旅費」)で、その旅行について通常必要と認められるものについては「非課税」とされています。

非課税となる出張旅費には、交通費、宿泊費、出張手当(日当)といったものがあります。

交通費や宿泊費については、実費精算している会社が多いですが、出張手当(日当)を支給している会社は本人に渡し切りで、実費精算は不要になっている会社もあります。出張手当(日当)とは、出張の際、身の回り品や外食代など普段よりも余分な支出が増えることから、会社によってはその分を手当として支給しようというものです。

非課税とされる旅費の範囲は「その旅行について通常必要と認められるもの」であれば非課税と規定されていますが、明確な基準は定められていません。

参考

所得税基本通達 9-3 非課税とされる旅費の範囲

https://www.zeiken.co.jp/hourei/HHTOK000030/9-3.html

出張旅費規程の作成方法

「出張旅費規程」を作成する主な事項は以下の内容になります。

  1. 目的
  2. 適用範囲
  3. 出張の定義
  4. 旅費の種類
  5. 宿泊費用の限度額
  6. 日当の計算方法
  7. 出張手続き(出張の申請・承認、旅費の仮払い、旅費の精算について)

また、出張旅費規程の作成には厳密なルールはありませんが、以下の要点を考慮することが推奨されます。

■全社員を対象とする
出張旅費規程は全ての社員に適用されるべきで、社長や役員だけに特別な扱いをすることは認められません。

■役職によって支給額に差をつける
例えば、社長ならビジネスクラスや高級ホテルの利用が適切かもしれませんが、新入社員に同等の待遇をするのは適切ではありません。役職に応じた出張旅費の基準を設けると良いでしょう。

■国内出張と海外出張で支給額に差をつける
国内と海外では宿泊費や諸雑費のコストが異なるため、出張先に応じて支給額を変更することが適切です。具体的な国別の基準を設定することも検討する価値があります。

■交通費は実費精算も検討する
出張先によって交通費が大きく異なるため、特定の場所に限られる出張では固定額を設定することもできますが、多様な目的地への出張がある場合は、実費精算を採用するのが現実的です。

■出張報告書を提出させる
出張の事実を証明するため、出張者には出張報告書の提出を義務付けることが重要です。これは税務調査においても有効で、出張の詳細を記録することで疑念を避けることができます。

■適切に承認をする
出張の事実に基づき管理者が適切に承認を行うことも重要になります。

■他社比較で金額の妥当性を確認する
他社と比較した場合の支給額の妥当性を判断することも重要になります。

これらのポイントを踏まえて出張旅費規程を策定することで、企業は税務上のリスクを管理し、効率的な旅費規定作成を実現することができます。

まとめ

出張旅費規程を策定する際は、いくつかの重要な点を考慮する必要があります。当記事で解説したポイントを踏まえた出張旅費規程の策定は、企業の経費管理を効率化し、節税に繋げる上で重要です。鈴木健志税理士事務所では、出張旅費規程の作成のアドバイスやサポートも行っておりますのでお気軽にご相談ください。

出張旅費規程の雛形はこちらからダウンロードいただけます。

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