令和6年1月より義務化される電子帳簿保存法について
◆電子帳簿保存法って何?
電子帳簿保存法とは、これまで紙で保存していた会計帳簿や領収書、請求書などを電子データにより保存する事を認める法制度になります。
この法制度により、書類の保存処理に係る事務負担が軽減されるようになります。
◆電子帳簿保存法の適用要件とは
電子帳簿保存法は、不正などを防ぐために下記2つの要件を満たしている必要があります。
➀真実性の要件
電子保存したデータが改ざんされるのを防止し、訂正や削除をした際に履歴が分かるようにしておくこと。
具体的な対応策としては以下の通りです。
・タイムスタンプの付与
・Google Driveなどを利用して、編集履歴が残る形で保存
・改ざん防止のための事務処理規程を設けておく
➁可視性の要件
電子保存したデータが明瞭な状態で閲覧・出力出来るようにしておき、誰でもすぐに閲覧できる状態にしておくこと。
具体的な対応策としては、以下の通りです。
・ファイル名に「日付・金額・取引先」を記載する
・Excelで索引を付与
◆電子帳簿保存法は3つの区分に分けられる
電子帳簿保存法とは、上述した2つの要件を満たして保存する必要があります。
また、電子帳簿保存法とは3つの区分に設けられており、電子保存する場合には下記区分に沿った対応が必要です。
◆電子取引とは
電子取引の保存とは、Eメールで受領したデータや、ペーパーレスFAXで受信した書類、インターネットでダウンロードしたデータなどの取引情報を電子データで保存することを言います。
ポイントは、受信したデータをそのまま保存する必要があり、取引情報を加工したりして保存することは認められず、上述した真実性や可視性の確保を充足している事が重要になります。
こちらは令和6年1月1日よりすべての事業者に義務化されます。
◆スキャナ保存とは
スキャナ保存とは、紙で取引先から受領した書類や自己で作成した書類を画像データとして保存することを言います。
スキャナ保存は、紙で作成された契約書や見積書、注文書などの「取引関係書類」が対象になります。
保存方法としては、スキャナによる取り込み、スマートフォンにより撮影したものを電子データとして保存する必要があります。
このスキャナ保存については、義務ではなく事業者の任意となるので、対応することが難しければ従来通り書面による保存でも問題はありません。
◆電子帳簿保存とは
パソコンなどによって電子的に作成した帳簿や書類を電子データのまま保存することです。
保存先はパソコンのハードディスクに限らず、DVDやCDの他、クラウドサーバーなどに保存する方法もあります。
対象書類は、仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳などの「国税関係帳簿」と、貸借対照表や損益計算書などの「国税関係書類」になります。
こちらについても義務ではなく、事業者の任意となりますので対応が難しければ無理に行うことは必要ありません。
◆電子帳簿保存法の改正内容について
電子帳簿保存法は、令和4年1月1日に改正法が施行され、電子取引により受領したデータについては、紙書類で保存する事が認められなくなりました。
その後、令和4年税制改正大綱により、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの2年間については、保存義務が猶予される宥恕措置が設けられました。
これまでの保存要件を満たす場合には、優良な電子帳簿として、過少申告加算税の軽減や65万円の青色申告特別控除といったメリット受けることが出来ます。
(優良電子帳簿について詳細な内容は割愛させて頂きます。)
ここでは、電子帳簿保存法の改正内容と宥恕措置について解説します。
※国税庁参考資料
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf
◆電子取引データで受領したものは電子データによる保存が義務化
電子帳簿保存法は従来から法律としてありましたが、これまで何度か改正が行われてきました。
上述したように、令和4年の改正によって電子データで受領したものについては電子データでの保存が義務化されました。
この保存義務については、宥恕措置が終了する令和6年1月より電子データによる保存が必須となります。
◆保存要件の緩和の具体的な内容について
保存要件の緩和として具体的な内容は下記3つ挙げられます。
➀事前承認制度の廃止について
これまでは電子帳簿保存法を適用する場合には、3ヶ月前までに税務署長への事前承認が必要でしたが、改正によって事前承認は不要となりました。
➁検索要件の緩和について
検索要件の緩和として、改正前と改正後は下記の通りになります。
改正前
・帳簿の種類によって、取引年月日、勘定科目、取引金額などから検索できること。
・日付または金額の範囲指定で検索できること。
・2つ以上の項目を任意に組み合わせて検索できること。
改正後
・検索項目が、取引年月日、取引金額、取引先の3つに限られる。
・税務調査の際に、速やかにデータをダウンロードできる場合、範囲指定と条件の組み合わせ検索機能が不要。
➂タイムスタンプ要件について
改正前では、スキャナ保存する場合、3営業日以内に受領者の自署とタイムスタンプを付与する必要があります。
改正後は、受領者の自署が不要になり、タイムスタンプの付与期限が最長で約2か月と7営業日以内に延びました。
また、訂正や削除の履歴を残していれば、タイムスタンプの付与が不要になりました。
◆宥恕措置とは
電子データにより受領したものについては、電子帳簿による保存が義務化されたことは上述した通りですが、令和4年度の税制改正大綱において、電子データによる保存義務が猶予される宥恕措置が制定されました。
この宥恕措置は「やむを得ない事情」がある場合には書面による保存を認めるというものになります。
この「やむを得ない事情」とは、電子データを保存する為のシステムが間に合わない、人手不足による社内ワークフローが整備出来ないなどが挙げられます。
宥恕措置を適用する場合、税務調査が入った際には「やむを得ない事情」について確認される可能性がある為、宥恕措置を適用する場合には事前に税務署へ確認しておくことをおすすめします。
◆まとめ
電子帳簿保存法は令和6年1月より電子データで受領したものについては、電子データによる保存が義務化されます。
注意すべき点として、電子データにより受領したものは電子保存すべきであり、書面で受領している場合には従来通り書面で保存すれば良いです。
全て電子化して保存する必要があると誤認している事業者の方もいるようなので注意が必要です。