個人所有の資産を法人へ引き継ぐ方法

売上や従業員数の増加に伴う事業規模の拡大によって、法人成りを行う個人事業主は多く存在します。
法人成りをした際に悩むポイントは多くあるかと思いますが、その一つに個人事業主の時代に従来から事業で使用していた資産を、法人へ引き継ぐ事が出来るのか疑問に思う人も出てくるかと思います。
本稿ではこの資産を引き継ぐ事が出来る方法について解説していきます。

◆資産を引き継ぐ4つの方法
法人成りをしたことによって、個人所有していた資産を引き継ぐ為には、次の4つの処理のいずれかの方法になります。
①譲渡
②賃貸
③現物出資
④贈与
上記いずれかの処理を行うことによって、法人へ資産を引き継ぐ事が出来る為、以下ではそれぞれの処理方法について解説していきます。

①譲渡した場合
個人事業で使用していた不動産、パソコン、車両などといった資産を法人成りをした際に引き継ぐ方法として、譲渡が挙げられます。
譲渡とは、資産を売却する事を言い、本稿の場合には個人事業主が法人へ資産を売却する行為を指します。
譲渡をした場合、法人側の処理としては個人事業主から譲り受けた資産を計上する必要があります。
個人事業主側では、譲渡した際に売却益が発生している場合には譲渡所得として確定申告を行う必要があります。

②賃貸した場合
個人事業でこれまで使用していた資産を、法人へ引き継ぐ主な方法として、資産を法人へ賃貸する場合が挙げられます。
前述した「譲渡した場合」には、売却時に不動産の登記手続きや税理士、司法書士などの専門家への相談料など、事務手続きや費用が発生してきます。
しかし、賃貸する場合、個人と法人間で不動産の賃貸借契約書を締結して、法人は契約書に記載された賃貸料を支払う事で完了します。
前述した譲渡のほか、この賃貸する方法のいずれか2つの方法が、個人と法人間で資産を引き継ぐにあたって最も多く行われている取引になります。

③現物出資をした場合
資産を引き継ぐ方法として、現物出資が挙げられます。
現物出資とは、既に所有している資産を法人設立時に、資本金として資産を移転させる方法です。
手元に資金がないが、資本金を増加させたいと考えている場合、個人所有している不動産を現物出資として活用する事で、現金が手元になくても、不動産の金額がそのまま資本金として増加する事になります。
ただし、現物出資を利用する場合には、現物出資が可能な対象資産が、不動産や債券などに限定されている事や、裁判所が選任した検査役の調査を受ける必要があるなど、いくつか手間がかかるので、一般的にはあまり利用される事業者の方は少ないです。

④贈与した場合
資産を引き継ぐ方法として、これまで解説した方法の他に、贈与による引き継ぎ方法が挙げられます。
贈与とは所有資産を、他人へ無償で譲渡することです。
例えば、所有していた車両を、第三者へ無償で譲渡する事を贈与と言います。
贈与の場合には、資産を譲り受けた法人側では、購入する為に必要となる資金を支払う必要がない為、法人に資金が不足している場合でも、法人へ資産を容易に移転する事が可能となるメリットが挙げられます。
贈与を行うにあたって注意すべき点は、個人事業主と法人の間で実際には現金の動きはないが、税務上は時価により譲渡したものとみなされる為、個人事業主側では譲渡所得が発生したことになり、確定申告が必要になります。
また、法人側では、時価により資産を譲り受けた事になる為、受贈益を計上する必要がある点も認識しておく必要があります。
現物出資と同様に、贈与についても、個人事業主の資産を法人へ引き継がせる方法としては一般的に行われることは少ないです。

◆引き継ぐ事が出来ない資産
個人事業主がこれまで所有していた資産を、法人へ引き継ぐ際に、従来個人事業主時代に所有していた資産をそのままの状態では引き継げない資産があります。
具体的なものとしては下記内容が挙げられます。

①事業資産が個人事業主の名義になっているもの
契約者が個人事業主になっている賃貸用不動産やリース資産などについては、法人へそのまま引き継ぐことは出来ません。
不動産などの場合には、法人契約は出来ず、個人しか契約できない物件もあるので、法人へ引き継ぐ場合には、契約者を個人から法人へ変更する必要があります。

②営業許可証が個人名義になっているもの
営業許可証に記載されている名義が個人名義になっている店舗などをそのまま法人へ引き継ぐ事は出来ません。
このような場合にも上記同様、法人へ引き継ぐ場合には、許可申請を個人から法人名義へ変更しておく必要があります。

◆まとめ
最近では専門知識がない一般の人でも容易に法人を設立することが出来るようになりました。
これまでは法人設立を行う場合、法務局などへ直接伺い、登記を行う必要がありました。
しかし、最近では法人設立システムを利用する事によって、自宅で簡単に法人設立をすることが可能になりました。
今後、法人設立を検討している人にとって、本稿が参考になれば幸いです。

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