法人の繰戻還付請求とは?流れと活用ポイント
欠損金の繰戻還付請求は、法人が赤字決算になった際に、前年に納めた法人税の一部または全部を還付してもらえる制度です。
赤字を翌年以降の黒字と相殺する「欠損金の繰越控除」とは異なり、前年にさかのぼって黒字と相殺し、納めた税金を取り戻せます。
資金繰り改善に即効性があり、中小企業にとっては有力な手段になります。
今回は法人の繰戻還付請求についてスポットを当てて解説していきたいと思います。
◆利用できる法人の条件
法人が繰戻還付請求を行うためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
①資本金1億円以下の中小法人
→大法人は制度の対象外です。
②青色申告法人であること
→青色申告の承認を受けている必要があります。
③当期が欠損であること
→決算で欠損金が発生していることが前提です。
④前期が黒字で法人税を納めていること
→前期に納税していなければ還付対象がありません。
⑤請求期限内であること
→欠損事業年度の確定申告書提出期限から1年以内に請求します。
※欠損事業年度とは、当期の所得金額が赤字となった事業年度を指します。
なお、連結納税制度を採用している法人や清算中の法人などは対象外です。
◆手続きの流れ
①欠損事業年度の確定申告書を作成
→当期の欠損金額を正確に計算し、法人税申告書の作成や青色申告書を準備します。
②繰戻還付請求書の作成
→「欠損金の繰戻による還付請求書」に、欠損金額・前期所得金額・還付見込額などを記載します。
③税務署へ提出
→赤字年度の申告書と繰戻還付請求書を申告期限内に管轄税務署へ提出します。
④税務署による審査と還付
→通常、申告から1〜2か月程度で指定口座に還付金が振り込まれます。
◆実施を検討すべきケース
繰戻還付請求の手続きを実施した方が良いケースは下記パターンが挙げられます。
・業績悪化で資金繰りが逼迫しているとき
→還付により早期に現金を確保できます。
・災害や外部要因で一時的に赤字になった場合
→臨時の資金補填として有効です。
・将来黒字化の見通しが立たない場合
→繰越控除による節税よりも繰戻還付を利用して還付を受けた方がメリットは大きくなります。
◆注意点
繰戻還付請求の手続きを実施するにあたり、注意すべき内容は下記の通りです。
・還付額は前期に納めた法人税額が上限で、欠損金額の全額が戻るわけではありません。
・将来黒字が見込める場合は、繰越控除の方が長期的に有利な場合もあります。
・法人の申告期限(繰戻還付の請求期限)を過ぎると繰戻還付請求を利用することはできません。
◆まとめ
繰戻還付請求は、赤字年度の資金繰り改善に即効性のある制度になります。
中小法人であれば活用のチャンスは多く、特に資金繰りが厳しい時や突発的な赤字発生時に有効です。
ただし、期限や条件を満たさなければ利用できないため、実施しようと考えている事業者様がおりましたら、弊所へご相談頂ければ幸いです。