退職金の「源泉徴収票」の提出範囲が拡大!
◆はじめに
2025年の税制改正によって、退職金を支払った際に作成する「退職所得の源泉徴収票(退職源泉票)」の提出範囲が拡大されます。
これまでは、会社の役員に退職金を支払った場合のみ、税務署や市区町村へ提出する必要がありました。
しかし、今後は一般の従業員へ退職金を支払った場合も、役員と同じように税務署や市役所へ提出する必要があります。
会社の経営者・総務・経理担当者にとって、事務作業が増える可能性があるため、このタイミングで内容を整理しておくことが重要になります。
◆改正のポイントと適用時期
①誰が対象になるのか
【改正前】
・提出が必要なのは「役員」に退職金を支払った場合のみ。
・従業員の場合は、本人に渡す源泉徴収票(本人用)だけでOK。
【改正後】
・役員、従業員の区別なし。
・国内に住んでいる人へ退職金を支払った場合はすべて提出対象。
・つまり「全居住者」が対象。
②いつから始まるのか
・2026年1月1日以降に支払う退職金から適用されます。
・ポイントは「退職日」ではなく「支払日」で判断されること。
例:2025年12月退職 → 退職金を2026年1月に支払う → 提出が必要。
③どの書類を提出するのか
従業員の場合も、役員と同じ3種類が必要になります。
・本人用
・税務署提出用
・市区町村提出用(特別徴収票扱い)
以前は従業員分は本人用だけだったため、大きな変更点です。
◆なぜ改正されたのか?
法律の説明文には細かい理由は書かれていませんが、実務的には次の背景があると考えられています。
・退職金は「勤続年数」などによって税額が大きく変わるため、税務署が正確な情報を把握する必要が高まった
・過去の退職金と合わせて控除されすぎるなどの「二重控除」を防ぎたい
・退職金に関する税務を公平・透明にするため
つまり、退職金の情報管理を厳しくし、税金の計算を適正にするための改正といえます。
◆実務で注意すべきこと
この改正によって、会社は退職金を支払うたびに提出すべき書類が増えます。
特に中小企業は事務負担が重くなる可能性があります。
【チェックしておきたいポイント】
①退職金の支払日を確認すること
→ 2026年1月以降の支払いはすべて提出対象。
②書類3種類を準備すること
→ これまで従業員分を紙で渡すだけだった会社はフローの見直しが必要。
③提出期限は退職後1か月以内
→ 税務署・市区町村へ忘れずに提出。
④電子提出(e-Taxなど)の準備
→ 提出枚数が増えるため、紙では管理しきれないケースも。
⑤会計ソフト・給与システムの設定を確認
→ 従業員の退職金でも源泉票を自動作成できるかチェック。
【特に注意が必要な企業】
・従業員数が多く、退職者もそれなりに出る会社
・年末〜年始に退職金を支払う可能性がある会社
・経理を手作業で行っている会社
いずれも書類作成が漏れやすいため、改善が必要です。
◆事前に準備しておきたいこと(チェックリスト)
①社長・総務・経理の間で役割を明確化
②給与・会計ソフトの設定を確認(従業員の退職金でも源泉票を出せるか)
③e-Tax・光ディスクの提出体制を整える
④従業員へ「税務署・市区町村へ提出される」旨を事前に説明する
⑤退職〜提出までの社内マニュアルを作成する
◆まとめ
2025年の税制改正により、退職金の源泉徴収票は「役員のみ」から「すべての居住者」へ提出対象が拡大します。
2026年1月1日以降に支払う退職金が対象となり、従業員に退職金を払った場合も税務署・市区町村への提出が必要になります。
事務作業が増えるため、早めに準備し、書類の作成漏れを防げる体制づくりが重要です。
今回の改正をきっかけに、社内フローやシステムの見直しを進めておくことをおすすめします。
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