同族会社って何?家族で会社を運営する人が知るべき税金の基本
◆はじめに
中小企業では、「家族で会社を経営している」「親族が中心となって会社を動かしている」といったケースがよく見られます。こうした会社は、税務上「同族会社」と呼ばれます。
経営者や後継者にとって、自社の株式や事業承継(会社を誰に引き継ぐか)に関する税金のしくみは、会社の未来にも家族の暮らしにも大きく関わる重要なテーマです。
しかし、同族会社ならではの税金ルールは複雑で、知らないまま進めると後で思わぬ税金がかかったり、トラブルにつながったりすることもあります。
この記事では、同族会社の経営者が最低限知っておきたいポイントを、できるだけ分かりやすくまとめました。
◆同族会社とは? 基本の考え方と注意点
税務上の「同族会社」とは、経営者一家や少数の特定グループが、会社の出資や議決権(重要事項を決める権利)の過半数を持っている会社のことをいいます。
具体的には、次のような場合に「同族会社」と判断されます。
・発行済株式(または出資金)の過半数を、少数の特定株主グループが持っている
・または、議決権の過半数をそのグループが持っている
・合同会社・合資会社などでは、出資者(社員)の過半数が同じグループに属している
多くの「家族経営」「創業者一族で運営している中小企業」は、この同族会社に該当します。
◆なぜ同族会社には特別な税務ルールがあるのか?
同族会社では、経営者や家族が会社のお金や経営をコントロールしやすいため、税務上「利益を特定の人に有利に動かす」、「税金を少なくするための不自然な取引をする」などのリスクがあると考えられています。
そのため税法では、以下のような通常の会社にはない特別な規定が適用されることがあります。
・行為計算の否認(不自然な取引を税務署が認めないルール)
・留保金課税(利益をため込み過ぎていると追加で税金がかかる可能性)
たとえば、将来の配当を避ける目的で会社に利益をため込み過ぎると、「課税逃れ」と判断され、追加の税金がかかることもあります。
◆自社株式の評価について
同族会社の株式は、上場株式と違って市場で値段がつきません。
そのため、相続や贈与、親族間で売買するときには、税務上のルールに沿って株価を計算します。
主に以下の評価方法があります。
・類似業種比準方式
上場企業を参考に、「配当」「利益」「純資産」を使って評価する
・純資産価額方式
会社の資産から負債を引いた「純資産」を基準に評価する
・併用方式
会社の規模に応じて上記の方式を組み合わせる
・特例的な方式(配当還元方式など)
少数株主などに適用される
評価方法によって株価が大きく変わるため、自社がどの方式になるかを早めに把握しておくことがとても重要です。
◆事業承継税制の活用
自社株を後継者に渡す際には、相続税や贈与税が大きな負担になることがあります。
この負担を軽減するための制度が 「事業承継税制(納税猶予制度)」 です。
一定の要件を満たすと、株式を引き継ぐ際の相続税や贈与税の支払いを実質ゼロにできる可能性があります。
ただし次のような要件があります。
・対象は中小企業・非上場会社であること
・後継者が一定期間役員であること
・会社の経営状況や資産構成に問題がないことなど
また、制度を使った後にも、
「過度な配当」「役員報酬の増額」「資産構成の大きな変化」などによって、制度の承認が取り消されるリスクがあります。
◆親族間での株式の売買・贈与・相続で注意すべき点
自社株式を家族や親族間で動かす場合、たとえ当事者同士で価格に合意していても、税務上は「時価」で評価するのが原則です。
非上場株式には市場価格がないため、税務署が定める評価額(税務上の時価)が使われます。
そのため、
・実際より安い値段で株式を売る
・名義株を作る(実際の持ち主と名義が違う株を作る)
といった行為は、税務署から
「時価との差額が贈与にあたる」と判断され、贈与税・所得税の対象になることがあります。
さらに、相続で株式を兄弟など複数人が取得してしまうと、議決権が分散し、会社の意思決定ができなくなる「準共有状態」になる恐れもあります。
そのため、事前に相続の方針を決めておくことが不可欠です。
◆まとめ
同族会社とは、家族や特定の少数グループが会社の議決権や出資の過半数を持っている会社のことをいいます。
このような会社には特別な税務ルールが設けられており、利益を過度にため込んだり、不自然な取引を行ったりすると、税務上の指摘を受ける場合があるため注意が必要です。
また、自社株(非上場株式)の評価にはいくつかの方法があり、どの方式が使われるかによって株価が大きく変わることがあります。
事業承継の場面では、事業承継税制を活用することで税負担を大幅に軽減できる可能性がありますが、そのためには制度の要件を満たす必要があり、適用後の管理も欠かせません。
さらに、親族間で株式を売買・贈与する場合には「時価」で評価されるのが原則となるため、実態より低い価格での譲渡や安易な名義変更は大きな税務リスクにつながります。
このように、同族会社では「会社の運営」「家族の相続」「税金」という3つの要素が密接に関わり合っています。
だからこそ、早い段階から株主構成や自社株の価値、事業承継の方針を確認し、必要に応じて専門家とともに計画を立てておくことが重要です。
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