少額減価償却資産の特例改正のポイントと活用方法
◆はじめに
中小企業や個人事業主にとって、設備投資を行った年にその全額を経費にできる制度は、資金繰りや節税に大きく影響します。
この役割を担っているのが「少額減価償却資産の特例」です。
令和8年度税制改正では、この制度について「適用期限の延長」、「対象金額の見直し」、「適用できる法人の範囲の変更」が行われました。
制度の使い方によっては税負担や投資判断に差が出るため、改正内容を正しく理解しておくことが重要です。
◆取得した年に全額を経費にできるしくみ
青色申告をしている中小企業者や個人事業主は、一定金額未満の減価償却資産について、通常の減価償却を行わず取得年度に全額を損金(必要経費)に算入できます。
従来はこの「一定金額」が30万円未満とされていました。
少額の設備投資を後押しし、手元資金を確保しやすくすることが制度の趣旨です。
◆改正内容
・改正① 適用期限の延長
令和11年3月31日まで利用可能に
本制度は時限措置ですが、今回の改正により適用期限が3年間延長されました。
これにより、今後も引き続き決算対策や設備投資の場面で活用できます。
・改正② 金額要件の引上げ
40万円未満まで対象が拡大
対象となる取得価額が、30万円未満から40万円未満へと引き上げられました。
近年は物価上昇の影響で、業務用PCや各種機器の価格が上がり、これまで制度の対象外となるケースが増えていました。
改正後は、30万円を超えるものでも40万円未満であれば即時償却が可能になります。
・改正③ 適用対象法人の範囲の見直し
従業員400人以下に縮小
制度を利用できる法人の規模要件は厳格化され、従来の「従業員500人以下」から「従業員400人以下」へ変更されました。
したがって、従業員数が401人以上の法人は本特例を適用できません。
自社が要件を満たしているかの確認が必要です。
◆取得時期の判断が重要
令和8年4月1日以後に取得する資産から新基準が適用されます。
そのため、30万円超40万円未満の資産を取得予定の場合は、取得日を調整することで税務上有利になる可能性があります。
◆実務で意識すべきポイント
年間300万円の限度額は従来どおり
1事業年度に全額損金算入できる金額の合計は300万円までで変更はありません。
対象資産の範囲が広がることで、この枠の管理がより重要になります。
◆投資計画と利益予測の連動
本制度を最大限活用するには、「当期の利益見込み」、「設備投資の予定」、「限度額の残額」を把握しておく必要があります。
そのためには、精度の高い月次決算が欠かせません。
タイムリーな業績把握が、最適な取得時期の判断につながります。
◆まとめ
令和8年度税制改正により、少額減価償却資産の特例は次のように見直されました。
➀適用期限:令和11年3月31日まで延長
➁金額要件:30万円未満 → 40万円未満へ拡大
➂対象法人:従業員400人以下に変更
④年間300万円の上限は据置き
対象資産は増える一方で、適用できる法人の範囲は狭くなっています。
取得時期のコントロールや月次決算による利益管理を行うことで、本制度をより効果的に活用できます。
決算対策や設備投資の判断に直結する改正であるため、早い段階での対応と顧問先への情報提供が重要となります。
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