建設業の税務調査で税務署から指摘されやすいポイントをわかりやすく解説
建設業界はその複雑な事業構造と財務管理の特性から、税務調査の頻度が高い業界の一つとして知られています。この記事では、建設業が税務調査で特に注目される理由と、税務署から指摘されやすいポイントに焦点を当てます。建設業に関わる経営者や個人事業主の方はぜひお役立てください。
建設業は税務調査が多いのか?
国税庁では「法人税等の調査実績の概要」として、毎年行った税務調査の件数や追徴課税額などのデータを公表しています。 その中で「不正発見割合の高い業種」として、土木・建築関連業が多く含まれています。
令和3事務年度法人税等の調査事績の概要によると、「職別土木建築工事」で不正発見割合が29.6%、「土木工事」で不正発見割合が28.7%、「一般土木建築工事」で不正発見割合が27.3%というデータが出ております。また、不正一件あたりの金額も1000万円を超えており、不正所得金額が大きい点も調査対象となりやすい理由と言えます。
参考:
令和3事務年度法人税等の調査事績の概要(国税庁)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/hojin_chosa/pdf/01.pdf
建設業ではなぜ不正が発生しやすいのか?
建設業の税務申告では、不正が生じやすい要因がいくつかあります。
まず、建設工事の期間が長いことが挙げられます。例えば、公共施設や大型ビルの建築には数年かかることもあり、これにより、工事の進行度合いに基づく適切な時期の収益計上が複雑になります。これが原因で、「期ズレ」が生じ、税務調査での問題点となることが多いです。例えば、損益計算上、翌期に計上すべき工事費を今期に繰り入れたり、逆に今期の利益を翌期に振り替えたりすることが発覚すると、税務署からの指摘を受け、修正申告の必要が生じることもあります。
次に、間接工事費の計上方法が標準化されていない点です。建設業の工事には、直接的な建築作業と、それ以外の間接工事があります。間接工事費の計上方法が一定せず、不適切な配分が行われると、税務調査で問題視されることがあります。
最後に、人件費と外注費の区分があいまいな点が問題となります。例えば、個人事業主に外注した作業が、実際は雇用関係に近い場合、それが給与扱いとなるべきかどうかが調査対象になります。ここでは、社会保険料や労働保険料の計上が問題となる場合があり、また外注費にした方が税金の控除が可能であるため(具体的には外注費であれば、消費税の課税仕入に該当するが、給与の場合には対象外仕入であるため)、これらの費用を意図的に外注費として計上していないかどうかが検証されます。このような判断は状況によって異なるため、解釈が難しいこともありますが、法律に基づく適切な基準に従った計上が求められます。
参考:
個人事業者の納税義務(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm
給与等 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所
https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/1201000000.html
建設業者が行える税務調査対策とは?
建設業における税務調査への対策として、契約書や台帳の詳細な作成と管理は重要です。具体的には、外注業者への用具提供の背景や、指揮監督下での作業が外注費として計上される根拠を、個々のケースに応じて文書化し保管することが求められます。さらに、間接工事費の分配基準を明確に記録しておくことも大切です。特に高額な取引や長期プロジェクトでは、これらの文書の厳格な管理が必要となります。
また、税務調査の際は、税理士の専門知識が有効です。税務調査はしばしば数年後に行われるため、その時点での詳細な説明が困難になることがあります。経験豊富な税理士に相談することで、調査に際しての同席や交渉、さらには書類作成の際の適切なアドバイスを受けることが可能です。これにより、調査時に生じうる複雑な問題への備えが整います。
まとめ
建設業は、税務調査の対象となりやすい業種で、国税庁のデータでも毎年取り上げられています。建設業界の会社は、他業種と比較して税務調査を受ける可能性が高いと言えます。これは、長期間にわたる工事、一件あたりの高い売上、さらに期ズレ、間接工事費の分配、人件費と外注費の区別など、複雑な会計処理が税務当局による注意を引きやすいためです。
対策として、正確な文書管理を徹底することが重要です。また、建設業界に特化した税務の専門知識を持つ税理士に相談することも有効です。これにより、税務調査に対する不安を軽減し、事業運営に集中することが可能になります。
鈴木健志税理士事務所は建設業に特化した税理士事務所で税務調査の経験も豊富です。お気軽にご相談ください。
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