一人親方に対する外注費が給与になるのかわかりやすく解説
建設業界において、一人親方への支払い方法は複雑な問題です。一見すると、外注費として簡単に処理できるかのように思えますが、実際は税務上の取り扱いが非常に微妙です。この記事では、一人親方への支払いが外注費から給与に変わる可能性と、受注側と発注側のどちらが請求金額を計算しているか等の条件について分かりやすく解説します。税務調査時に外注費が給与として認定されることは、追加の税金が発生するリスクを伴います。適切な会計処理を理解し、適切に対応するための重要なポイントを、建設業を営む皆様にお伝えします。
目次
独立して事業を営んでいるかの判断
もし常用工に支払う人件費を外注費として処理する場合、その常用工は事業を自立的に行っている者である必要があります。定義としては、「事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者」を指します。そのため、常用工が雇用関係やそれに準ずる契約により企業に従属している場合、その人への支払いは外注費ではなく給与として扱われることになります。常用工が独立して事業を行っているかどうかの判断は、複数の要素を総合して行われます。
参考:
第1節 個人事業者の納税義務(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm
その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか
もし特定の常用工に依頼している作業が、その人特有の技能や能力が必要で他の人では代替が難しい場合、その支払いは給与の特性を帯びることが多くなります。
逆に、その作業が特定の個人に限らず他の人でも問題なく対応可能であれば、その支払いは外注費の性質を持つと考えられます。
役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか
もし特定の常用工が会社の指示や管理下で業務を遂行している場合、その報酬は給与としての特徴が強まります。
しかし、会社の指揮や管理を受けることなく、自立して業務を行っている場合には、その支払いは外注費としての特性を持つと考えられます。
まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか
例えば、A社がBさんに工事を委託し、Bさんが工事を完了する前に災害などで工事をA社に引き渡せなくなった場合を考えてみましょう。
この状況で、もしBさんが独立した事業主であれば、工事を引き渡せないためにA社からの報酬を受け取ることはできません。このようなケースでは、報酬の性質は外注費とみなされる傾向があります。
一方で、もしBさんがA社の従業員のような関係にあれば、たとえ工事を引き渡せなくても働いた分の報酬を請求できるため、報酬は給与としての性質を帯びることになります。
役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか
工事の際に使用される材料や用具を、常用工自身が準備する場合、その報酬は外注費と見なされる傾向があります。
反対に、もし材料や用具が会社から提供されて仕事が行われる場合は、その報酬は給与の性質を持つと考えられます。
外注費が給与となってしまった場合の税金はどうなるか?
外注費が給与として認定されてしまった場合には、消費税と源泉所得税の追徴課税が発生してしまいます。そのため、税務調査により外注費が給与として認定されてしまうと、消費税の納税額が過少ということになり、追徴課税が発生することになります。また、源泉所得税の納付もれということにもなってしまいます。
まとめ
これらの事項は、判断基準の一例に過ぎず、必ずしもこれに準じていなければ給与と認定されるわけではありません。外注費と給与の区分は複雑であり、状況に応じた慎重な判断が必要です。
外注費として認められるためには、まず請負契約書の作成が推奨されますが、契約書の存在だけで外注費として認定されるわけではない点に注意が必要です。
また、労災保険など個人が負担すべき費用は、個人に負担させることが大切です。重要なのは、自社の従業員とは異なる、独立した事業者として扱うことが、外注費として認められるための基本的なアプローチです。
鈴木健志税理士事務所では一人親方に対する支払いが外注費か給与かの判断サポート等も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
参考:
消費税法基本通達|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01.htm
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