工事完成基準と工事進行基準の違いと適用基準について解説
建設業における会計処理は、工事の収益と原価の計上タイミングに大きく依存します。一般的に、工事の完成や引き渡しのタイミングでこれらを計上する方法が一般的であり、これを「工事完成基準」と呼びます。しかしながら、この基準以外にも、「工事進行基準」というもう一つの重要な会計基準が存在します。これは、工事の進行状況に応じて、段階的に収益や費用を認識する方法です。
税務上、収益を遅らせて計上することがしばしば有利とされるため、工事進行基準の採用は一般的ではありません。しかし、決算書をより良く見せる目的で、収益を前倒しで計上できる工事進行基準を選択することもあります。特に、赤字工事の場合、その赤字を早期に計上できるため、工事進行基準が有利になることがあります。
さらに、工期の長さや請負代金の大きさに応じて、工事進行基準の採用が義務付けられることもあるため、これらの違いと適用基準に関する理解は、建設業に従事する経営者や会計担当者にとって非常に重要です。本記事では、これらの基準の違いと適用条件について詳しく解説していきます。
工事進行基準の収益・費用の計算方法
工事進行基準における収益と費用の算出方法について説明します。この基準では、まず工事がどれだけ進んでいるかを示す「工事進行割合」を算出します。これは、期末までにかかった工事原価の累計を、予測される工事の全体的な原価で割ったものです。
この割合に基づき、該当期間に計上すべき工事の収益と費用を求めます。計算する際、その工事の総請負代金に工事進行割合を乗じ、それまでの期に計上した収益を差し引いたものが当期の収益となります。同様に、見積もりの工事総原価に工事進行割合を適用し、それまでの期に計上した費用を引いた額が当期の費用になります。
参考
工事の請負|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_04_02.htm
工事進行基準を用いているとき|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6161.htm
工事進行基準が強制される場合とは
下記の要件に合致する長期大規模工事では工事進行基準が強制されます。
- 着手の日から目的物の引き渡しの日までの期間が1年以上であること
- 請負の対価が10億円以上であること
- 請負の対価の額の2分の1以上が目的物の引き渡しの日から、1年を経過する日以後に支払われるものでないこと
- 損失が見込まれる工事を含む
まとめ
この記事では、建設業における「工事完成基準」と「工事進行基準」の違いと、それぞれの適用基準について解説しました。工事完成基準は、工事が完全に完成して引き渡された時点で収益と費用を計上する方法で、これに対して工事進行基準では、工事の進捗に応じて収益と費用を段階的に計上します。この基準の下では、工事の進行割合を計算し、それに基づいて収益と費用を決定します。税務上の扱い、決算書の見栄え、さらには赤字工事の取り扱いなどによって、どちらの基準を選択するかが異なります。また、工期や請負代金の規模によっては、工事進行基準の採用が強制されることもあるため、これらの基準の理解と適切な適用が重要です。
鈴木健志税理士事務所ではどちらの会計基準を適応させるべきかのご相談なども行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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