節税に繋がる小規模企業共済について解説
当記事では退職金を自ら確保しなければならない会社経営者や個人事業主のための解決策である小規模企業共済について解説します。多くの企業が退職金制度を採用していない現代において、自営業者や小規模企業のオーナーが自身の退職後の生活資金を効率的かつ税効果的に蓄積するための方法として、小規模企業共済制度の特徴などについて解説します。
この記事では、小規模企業共済のメカニズム、その節税効果、そして貯蓄の仕組みについて詳細に解説し、読者が経済的な将来を安全かつ賢明に計画できるよう支援します。
小規模企業共済とは?
小規模企業共済は、個人事業主が廃業したとき、会社経営者が役員を退任したときなどの生活資金をあらかじめ積み立てていくための共済制度です。中小企業基盤整備機構(中小機構)が運用するもので、昭和40年の制度発足以降、2022年時点において約160万件の方が加入しており、事業者にとってはかなりメジャーな制度となっております。老後の生活資金を自分で確保しなければならない事業者にとっては、有効な制度であるということができます。
特徴1:掛金は加入後も増減可能、全額が所得控除
月々の掛金は1,000〜70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。また、年払いもできるので、決算対策としても有効です。
特徴2:共済金の受取りは一括・分割どちらも可能
共済金は、退職・廃業時に受け取り可能。満期や満額はありません。共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能です。一括受取りの場合は退職所得扱いに、分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットもあります。
特徴3:低金利の貸付制度を利用できる
契約者の方は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度をご利用いただけます。低金利で、即日貸付けも可能です。
※いろいろな貸付制度
一般貸付け / 緊急経営安定貸付け / 傷病災害時貸付け / 福祉対応貸付け / 創業転業時・新規事業展開等貸付け / 事業承継貸付け / 廃業準備貸付け
参考:
小規模企業共済|小規模企業共済(中小機構)
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
小規模企業共済の加入資格
小規模企業共済制度には、次のいずれかに該当する場合にご加入いただけます。
- 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
- 上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
補足事項
- 2つ以上の事業を行っている事業主または共同経営者の方は、主たる事業の業種で加入していただきます。
- 「常時使用する従業員」には、家族従業員、共同経営者(2人まで)を含みません。
- 「会社等の役員」とは、株式会社・有限会社の取締役または監査役の方、合名会社・合資会社・合同会社の業務執行社員の方を指します(ただし外国法人の役員は除く)。
加入資格がない例
以下のいずれかに該当する場合は、本制度にはご加入いただけません。
- 配偶者等の事業専従者(共同経営者の要件を満たしていない場合)
- 協同組合、医療法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、社団法人、財団法人、NPO法人(特定非営利活動法人)等の直接営利を目的としない法人の役員等
- アパート経営等の事業を兼業している給与所得者(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)(※)
- 小規模企業者に該当する個人事業主であるほかに小規模企業者に該当しない事業等を兼業している場合や、小規模企業者である会社等役員が小規模企業者に該当しない会社等役員を兼任している場合(いずれも小規模企業者に該当しないと加入資格がない。)
- 学業を本業とする全日制高校生等
- 会社等の役員とみなされる方(相談役、顧問その他実質的な経営者)であっても、商業登記簿謄本に役員登記されていない場合
- 生命保険外務員等
- 独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する「中小企業退職金共済制度」、「建設業退職金共済制度」、「清酒製造業退職金共済制度」、「林業退職金共済制度」の被共済者である場合
- ※ただし、次のような場合は小規模企業者として加入できます。
- 開業医が本業の事業所得のほかに、市町村から委託を受けて行った定期健診の報酬による給与所得がある場合
- 農業者が本業の農業所得のほかに、農閑期の一時的なアルバイト収入による給与所得がある場合
- 弁護士が本業の事業所得のほかに、大学の非常勤講師の収入による給与所得がある場合
参考
加入資格|小規模企業共済(中小機構)
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/entry/eligibility/index.html
まとめ
小規模企業共済は、会社経営者や個人事業主にとって貴重な節税対策となります。退職金制度を自分で準備する必要のあるこれらの職業において、小規模企業共済は貯蓄と節税の両方の利点を提供します。共済金の積立は税控除の対象となり、将来の安定した退職金としての利用が可能で、この制度は、将来のための計画的な貯蓄を実現しつつ、現在の税負担を軽減する効果的な手段として機能します。
鈴木健志税理士事務所では小規模企業共済のご提案を含め、お客様のご状況に応じた幅広い節税案をご提案いたしますのでお気軽にご相談ください。
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