間接工事費の工事別原価への配賦方法について解説

建設業における工事原価計算は、材料費、労務費、外注費、経費の4区分に分けられる費目別計算から始まります。この基礎的な計算法を理解した上で、次のステップとして工事別原価の適正な算定が重要になります。このプロセスの中核をなすのが、間接工事費、または現場共通費と呼ばれる費用の各工事原価への配賦です。

これらの間接工事費は、特定の工事に直接関連しないため、適切な配分が不可欠です。本記事では、工事原価を効果的に直接工事費と間接工事費に分類し、後者を各工事原価に割り当てる方法について解説します。この配分の適切な管理は、コスト管理と利益最大化の両方において建設業にとって非常に重要です。

間接工事費(現場共通費)の具体例とは

間接工事費、または現場共通費とは、建設業において複数のプロジェクト間で共有される一連の費用を指します。この費用の範囲には、様々な要素が含まれます。まず、複数の工事現場の管理を行う従業員に支払われる給料や手当、法定福利費などの労務費が含まれます。これには、現場監督者やプロジェクトマネージャーなど、複数の現場で働く人々への報酬が含まれることが一般的です。また、これらの従業員が受ける法定福利費もこの範疇に入ります。

次に、仮設材料費があります。これは、工事現場で一時的に使用される材料や構造物に関連する費用です。これらには足場や仮設建物、保安設備などが含まれ、プロジェクトの性質上、しばしば複数の現場で共用されることがあります。

また、建設機械や車両に関連する諸経費も間接工事費の一部です。これには、機械や車両の維持、修理、燃料費などが含まれ、これらもまた多くの場合、複数のプロジェクトで共有されます。

最後に、複数の工事現場を管理する現場事務所の経費があります。これには事務用品、通信費、電気や水道費など、事務所運営に必要な様々な経費が含まれます。これらの費用は、特定のプロジェクトに直接結びつかないものの、複数の現場での活動を支えるために不可欠です。

間接工事費を工事別原価に割り当てる(配賦する)方法

間接工事費(現場共通費)を工事別原価に割り当てる上では、下記の算式を用いて行います。

間接工事費 ×(各工事の配賦基準値÷全工事の配賦基準値)=各工事への配賦額

ここで、配賦計算を行う上で、間接工事費のグループ分けや、配賦計算を行う上での基準値を設定する必要があります。

間接工事費の配賦方法には、それぞれ異なる特徴と適用のシナリオがあります。まず、「一括的配賦法」は最も基本的な形式です。この方法では、すべての間接工事費を一つの配賦基準に基づいて分配します。その単純さから、小規模のプロジェクトや会社では十分効果的で、管理が容易です。しかしこの方法は、複数のプロジェクト間の費用の差異を考慮しないため、大規模なプロジェクトや複雑な事業構造を持つ会社では不十分な場合があります。

次に、「グループ別配賦法」があります。このアプローチでは、似た特性を持つ原価要素をグループ化し、それぞれのグループに特定の配賦基準を適用します。この方法は、異なる種類の間接費用により適切な配賦基準を適用することができるため、一括的配賦法よりも精密さを増します。これは、会社の規模が大きくなったり、プロジェクトが多様化したりするにつれて有効な手法となります。

最後に「費用別配賦法」があります。これは、各費目ごとに個別の配賦基準を設定する方法で、最も精密な配賦方法です。この方法は、個々の間接費用の性質を詳細に考慮し、それぞれに最も適切な配賦基準を適用します。大規模な企業や複雑なプロジェクト管理を行う場合、この方法が最も適しています。

要するに、選択する配賦方法は、会社の規模、プロジェクトの複雑性、管理の必要性などによって異なります。小規模な会社や単純なプロジェクトでは一括的配賦法が適している一方で、規模が大きくなるにつれてグループ別配賦法や費目別配賦法のようなより精緻な方法を採用する必要が出てきます。

また、配賦計算を行う上では、配賦基準値を設定する必要があります。配賦基準数値別の配賦方法としては、下記の方法があります。

価額法
・ 直接材料費法
・ 直接賃金法
・ 直接原価法

時間法
・ 直接作業時間法
・ 機械運転時間法
・ 車両運転時間法

数量法(材料などの個数、重量、長さなどを基準値とする方法)

売価法

上記いずれの配賦基準数値を選択すべきかは、費目の特性、企業の規模や特性、計算の重要性などを勘案して判断します。いずれにしても工事間接費の発生となんらかの因果関係のある配賦基準を選択すべきです。また、複雑にすればするほど、実務的な負担が大きくなります。実務的には、シンプルでわかりやすく設定し、柔軟に配賦基準を変更できることが重要です。

まとめ

建設業における間接工事費の配賦は、プロジェクトの特性と企業の規模に応じて慎重に選択されるべきです。一括的配賦法はそのシンプルさから小規模プロジェクトや企業に適していますが、より大規模で複雑なプロジェクトでは、費用の性質をより詳細に考慮する必要があります。この場合、グループ別配賦法や費目別配賦法の採用が適切です。これらの方法では、似た性質の費用をグループ化し、それぞれに最も適した配賦基準を適用することで、より精確で公平な原価計算が可能になります。結局のところ、適切な配賦方法の選択は、プロジェクトの透明性と効率的なコスト管理の鍵を握っています。

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