インボイス制度の経過措置とは?仕入税額控除の70%・50%・30%への変更を解説
◆はじめに
2023年10月1日にインボイス制度が開始され、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要となりました。
しかし、免税事業者など、インボイスを発行できない事業者との取引について、制度開始と同時に仕入税額控除が一切認められなくなると、取引先や買手側の税負担が急激に増加する可能性があります。
そこで設けられたのが、インボイス制度の経過措置です。
この経過措置により、一定期間はインボイスを発行できない事業者からの仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を控除できます。
さらに、令和8年度税制改正により、経過措置の控除割合や適用期間が見直されました。
本記事では、控除割合が70%・50%・30%へと段階的に変更される仕組みや、適用に当たっての注意点について解説します。
◆インボイス制度の経過措置と控除割合の変更
インボイス制度の経過措置とは、免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて、一定割合の仕入税額控除を認める制度です。
当初は、2026年10月から3年間にわたり50%の控除が認められ、その後は控除できなくなる予定でした。
しかし、令和8年度税制改正により、控除割合の引下げが段階的に行われることとなりました。
具体的な適用期間と控除割合は、以下のとおりです。
・2023年10月1日~2026年9月30日⇒80%
・2026年10月1日~2028年9月30日⇒70%
・2028年10月1日~2030年9月30日⇒50%
・2030年10月1日~2031年9月30日⇒30%
・2031年10月1日以降⇒0%
※控除割合は、課税仕入れに係る消費税額に対する割合です。
このように、経過措置は一度に終了するのではなく、段階的に縮小されます。
なお、2026年10月1日以後の課税仕入れについては、従来の80%控除から70%控除へ変更されるため、仕入税額控除の金額が減少する点に注意が必要です。
◆仕入税額控除の計算方法と具体例
経過措置を適用した場合、仕入税額相当額に一定の控除割合を乗じて、仕入税額控除の対象となる金額を計算します。
例えば、免税事業者から税込110万円の商品を仕入れた場合を考えてみましょう。
税率10%の取引であれば、仕入税額相当額は10万円です。
この取引について、各期間における仕入税額控除の金額は、以下のようになります。
控除割合⇒控除できる金額
・80%⇒8万円
・70%⇒7万円
・50%⇒5万円
・30%⇒3万円
例えば、2026年10月以降に仕入れた場合、仕入税額相当額10万円の70%である7万円が控除対象となります。
一方、2030年10月以降は控除割合が30%となるため、控除できる金額は3万円まで減少します。
このように、控除割合の変更によって、課税事業者である買手側の消費税負担が増加する可能性があります。
なお、上記は仕入税額相当額を10万円とした単純な計算例です。
実際の申告では、課税仕入れの内容や適用する消費税の計算方法などを確認する必要があります。
◆経過措置を適用するための要件と注意点
経過措置を適用するためには、一定の帳簿および請求書等を保存する必要があります。
具体的には、以下の事項を確認しましょう。
➀帳簿に必要事項を記載する
通常の帳簿の記載事項に加えて、経過措置の適用対象となる課税仕入れである旨を記載する必要があります。
例えば、「70%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」などの記載が考えられます。
➁請求書等を保存する
区分記載請求書等と同様の記載事項が記載された請求書等を保存する必要があります。
主な記載事項は、以下のとおりです。
・書類の作成者の氏名または名称
・課税資産の譲渡等を行った年月日
・取引内容
・税率ごとに合計した税込対価の額
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
➂適用する控除割合を確認する
経過措置の控除割合は、原則として課税仕入れを行った時期によって判断します。
例えば、商品を仕入れた場合は、原則として商品の引渡しがあった日が課税仕入れの時期となります。
そのため、2026年9月に発注した商品であっても、引渡しが2026年10月以降であれば、原則として70%控除の対象となります。
また、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、経過措置の対象となる課税仕入れの合計額に関する上限も見直されます。
同一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額が、税込1億円を超える場合、その超過部分については経過措置を適用できません。
従来の上限は税込10億円であったため、対象となる取引が多い事業者は、仕入先ごとの取引金額を把握しておくことが重要です。
◆まとめ
インボイス制度の経過措置は、免税事業者などからの仕入れについて、一定割合の仕入税額控除を認める制度です。
令和8年度税制改正により、控除割合は2026年10月から70%、2028年10月から50%、2030年10月から30%へと段階的に引き下げられます。
経過措置の適用期間が終了する2031年10月以降は、原則として仕入税額控除を受けられなくなるため、取引先の登録状況や仕入税額控除への影響を把握しておく必要があります。
また、経過措置の適用には帳簿や請求書等の保存が必要となるため、日々の経理処理においても適切な対応が求められます。
控除割合の変更を踏まえ、仕入先との取引条件や経理体制を見直し、将来の税負担に備えておきましょう。
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