中小企業が株主に配当金を支払うには?分配可能額の計算や会計処理、税務上の留意点を解説
◆はじめに
中小企業では、社内に留保した利益を株主に配当するケースが見られます。
配当は会社の預金から任意に支出できるものではなく、会社法が定める「分配可能額」の枠内で行わなければなりません。
また、剰余金の配当を行う日において純資産の額が300万円を下回る場合には、配当を行うことができません。
あわせて、株主への支払い時には所得税・復興特別所得税の源泉徴収が必要となるため、会計処理と税務処理の双方を正しく行うことが求められます。
今回は、株式会社が株主に金銭で配当を行うケースを想定し、分配可能額の考え方、決議の方法、仕訳、源泉徴収について解説します。
◆配当の実施には株主総会の決議が必要
株式会社が剰余金の配当を行う場合、原則としてそのつど株主総会の決議により、配当財産の種類・総額、株主への割当方法、効力発生日などを決定します。
例えば、株主Aが60%、株主Bが40%の株式を保有している場合、配当も原則としてこの60%・40%の比率で行われます。
なお、取締役会設置会社であっても、一定の条件を満たし、定款にその旨の定めがある場合には、取締役会が剰余金の配当に関する事項を決められることがあります。
そのため、配当を実施する際は、まず会社の定款を確認したうえで、適切な機関において決議を行うことが大切です。
◆分配可能額を超える配当は認められない
配当において特に留意すべき点が「分配可能額」です。
会社法では、剰余金の配当などにより株主に交付する金銭等の帳簿価額の合計が、効力発生日における分配可能額を超えてはならないと規定されています。
分配可能額は、単に「利益剰余金=配当できる金額」というわけではありません。
会社法上の「剰余金」をベースに、自己株式の帳簿価額や一定の控除項目などを反映して算出します。
そのため、会計上は利益剰余金が十分にあるように見えても、自己株式の取得などの影響で、実際に配当できる金額が減少することがあります。
また、剰余金の配当を行う際には、原則として配当により減少する剰余金の額の10分の1を、資本準備金または利益準備金として積み立てる必要があります。
ただし、準備金の合計額がすでに資本金の4分の1に達している場合など、積立が不要となるケースもあります。
中小企業が配当額を決定する際は、決算書上の利益剰余金だけで判断せず、会社法上の分配可能額を確認することが欠かせません。
◆純資産額が300万円を下回る場合は配当できない
株式会社は、剰余金の配当を行う日において、純資産の額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当をすることができません。
そのため、分配可能額がある場合であっても、配当を実施する際には、会社の純資産の額が300万円以上であるかを確認する必要があります。
特に、利益剰余金が残っている中小企業であっても、過去の損失などによって純資産の額が300万円を下回っている場合には、剰余金の配当を行うことはできないため注意が必要です。
◆配当金支払い時の会計処理と源泉徴収
例えば、株主に100万円の配当を行い、必要な利益準備金10万円を積み立てるケースを見てみます。
配当の効力発生日には、おおむね次のように処理します。
配当決議時の仕訳
借方:利益剰余金 1,100,000円
貸方:未払配当金 1,000,000円
貸方:利益準備金 100,000円
その後、個人株主へ配当金を支払う際、非上場会社の配当については、原則として20.42%の所得税・復興特別所得税を源泉徴収します。
配当金100万円の場合、源泉徴収税額は204,200円となり、株主への振込額は795,800円になります。
支払時の仕訳
借方:未払配当金 1,000,000円
貸方:普通預金 795,800円
貸方:預り金 204,200円
会社は源泉徴収した所得税・復興特別所得税を、原則として定められた期限までに税務署へ納付します。
なお、配当金そのものは会社の損金となる費用ではなく、利益剰余金などの処分として処理します。
一方、株主側では配当所得として課税関係が発生します。
非上場株式等の配当は、原則として総合課税の対象です。
◆まとめ
中小企業が株主に配当を行う場合、「利益が出たから配当する」というだけでは不十分です。
まず会社法上の分配可能額を確認し、その範囲内で配当額を決定します。
また、剰余金の配当を行う日において純資産の額が300万円を下回る場合には、配当を行うことができません。
そのうえで、原則として株主総会において配当に関する事項を決議し、必要に応じて利益準備金などの積立を行います。
さらに、個人株主に配当を支払う場合は、原則20.42%の所得税・復興特別所得税を源泉徴収し、適切に納付する必要があります。
とりわけ中小企業では、オーナー社長が大株主であるケースも多いため、役員報酬とのバランス、会社の資金繰り、株主側の税負担なども踏まえながら、配当額を検討することが重要です。
何かご不明な点がございましたら、是非弊所へご相談下さい。
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